1.先天性疾患

先天性疾患には以下のような特徴が報告されています。

出生児の3.0~5.0%は、先天性疾患をもって生まれてきます。先天性疾患の中で染色体疾患によるものは25%程度です。他に、単一遺伝子疾患、多因子遺伝、環境・催奇形因子などの影響が推定されています。

染色体疾患は、染色体の変化によって起こる疾患です。これらの染色体や遺伝子の変化に基づく疾患、あるいは病態は、人の多様性として理解されています。

障がいをもっていることは、その人の個性の一面でしかなく、障がいをもつことと本人および家族の幸、不幸は本質的には関係がないといわれています。

障がいには、先天的なものもありますが、生後に起こる、あるいは大人になって起こるものもあり、我々全てがいつかはなんらかの障がいをもって生活するともいえるでしょう。

2.染色体とは?

人のからだは、約60兆個の細胞から成り立っています。心臓,肝臓,脳,皮膚,白血球などすべて細胞から構成されています。

すべての細胞の中にはそれぞれ染色体があり、46本づつ入っています。その内訳は、常染色体が22種類×各2本で44本、性別を決める性染色体が2本です。

常染色体は,その大きさの順番に1番から22番まで番号がつけられており、21番染色体が最も小さな染色体です。

性に関する染色体(性染色体)としてX染色体、Y染色体があります。

染色体上の決まった場所に決まった遺伝子がのっています。遺伝子とは、人間の受精から一生を終えるまでに必要な設計図と例えることができます。

3.染色体と病気

人の染色体を観察すると、ときに染色体の数や染色体の形に変化が見られることがあります。

染色体の変化のうち、染色体の量に過不足が起きた場合、遺伝子の過不足が生じ、赤ちゃんの発生や成長に影響して、先天性の疾患や体質の原因(染色体疾患)になります。

染色体数の変化による先天性疾患の中で、頻度の高いのがダウン症候群、18トリソミー、13トリソミー(出生頻度順に記載)です。

常染色体の数の変化の中で、生まれてこれるのは上記の3つの疾患です。

4.主な染色体疾患の概要

 13トリソミー18トリソミーダウン症候群
(21トリソミー)
身体的特徴成長障害
呼吸障害・摂食障害
胎児期からの成長障害
呼吸障害・摂食障害
成長障害
筋肉の緊張低下
特徴的顔貌
合併症※口唇口蓋裂
多指趾症
眼の病気
心疾患(80%)
全前脳胞症 等
心疾患(90%)
消化管奇形
口唇口蓋裂
関節拘縮 等
心疾患(50%)
消化管奇形(10%)
甲状腺疾患
耳鼻科疾患
眼科的疾患 等
発達予後運動面、知的面ともに強い遅れを示す。
言葉の使用は難しいが、サインや表情で応えることが可能なこともある。
気管挿管や呼吸補助が必要である。
運動面、知的面ともに強い遅れを示す。
言葉の使用は難しいが、サインや表情で応えることが可能なこともある。
気管挿管や呼吸補助が必要である。
ダウン症候群の子どもの多くは、支援クラスを利用しながら地元の学校や特別支援学校に通っている。
スポーツ、芸術などのさまざまな分野で活躍している人がいる。
寿命90%は1年以内胎児死亡も高頻度(50%)
50%は1か月、90%は1年
50‐60歳

(※これらはすべて合併するとは限りません。また、症状の重症度や発達予後,寿命には個人差があります。)

 5.母体年齢と出生児の染色体疾患の発生率
出産年齢の高年化に伴い、染色体疾患の頻度は増加します。卵子形成時の染色体不分離の頻度の増加などが原因の一つと考えられています。

母体年齢
(出産時)
ダウン
症候群
18トリソミー13トリソミー
201/14411/100001/14300
251/13831/83001/12500
301/9591/72001/11100
351/3381/36001/5300
361/2591/27001/4000
371/2011/20001/3100
381/1621/15001/2400
391/1131/10001/1800
401/841/7401/1400
411/691/5301/1200
421/521/4001/970
431/371/3101/840
441/381/2501/750
451/30

Gardner RJM. Chromosome Abnormalities and Genetic Counseling 4th Edition, New York, Oxford University Press 2011