赤ちゃんの先天異常には、超音波検査で認められるような形態の異常から診断される疾患や染色体疾患、遺伝子配列の変化による疾患など多彩です。超音波検査の結果から染色体疾患を疑うこともあります。
先天異常の25%の原因であるといわれる染色体疾患の検査法について解説します。
参考:NIPTコンソーシアム
1.染色体疾患の検査法
染色体疾患の中で多いのがダウン症候群や18トリソミーなどの疾患です。赤ちゃんの染色体疾患の可能性を評価する検査として、非確定検査があります。
その中には、超音波検査で児の後頸部の皮下のむくみの厚さ(NT)などを測定して、その可能性を評価する方法や、母体の血液中の蛋白質濃度などを測定し、統計学的にその可能性を評価する方法などはあります。
これらの検査では、100人が検査を受けると5人(5%)で検査陽性となる(偽陽性率5%)ように設定すると、ダウン症候群の赤ちゃんを妊娠した妊婦さんの70-80%でその可能性が高いと診断できる(感度70-80%)という検査です。
今回の母体血胎児染色体検査は、同様に非確定検査に分類されますが、偽陽性率は1%以下と低く、感度も99%以上という高精度な検査です(精度については別項参照)。
これらの非確定的検査で可能性の上昇を指摘された場合に、診断を確定させるために行うのが絨毛染色体検査や羊水染色体検査になります。
- 非確定的検査
- 1. 超音波計測(初期NTなど)による染色体疾患の可能性の評価
- 2. 母体血清マーカー検査(クアトロ検査,トリプルマーカー検査)
- 3. コンバインド検査(母体血清マーカー検査と超音波検査の組み合わせ)
- 確定的検査
- 1. 絨毛染色体検査
- 2. 羊水染色体検査
2.羊水染色体検査
羊水染色体検査の流れと検査概要は以下の通りです。
- 妊娠15週以降に行われます。
- 子宮内の羊水中には、赤ちゃんに由来する細胞が浮遊しており、それを採取します。
- 浮遊細胞を培養して染色体診断・遺伝子診断を行います。
- 羊水穿刺は、超音波検査で赤ちゃんの位置を確認し、腹部を消毒し、長い注射針を刺して行います。
- 300人に1人位の頻度で、破水、出血、子宮内感染、穿刺針による母体障害(血管や腸管など)、流産や胎児死亡、早産、羊水塞栓症などの合併症が起こといわれています。
- 羊水細胞の培養に時間がかかるため結果が出るまでに約2週間かかります(まれに3週間かかります)。
- モザイク(正常細胞と染色体の変化を持つ細胞が混在している)や微細な染色体の変化(染色体レベルでは検出できない小さな染色体部分の欠失や重複など)は検出されないことがあります。
超音波マーカー検査 (NTなど) | クアトロ検査 | 母体血中胎児 染色体検査 | 絨毛検査 | 羊水検査 | |
非確定的検査/ 確定検査 | 非確定的検査 | 確定検査 | |||
実施時期 | 11-13週 | 15-18週 | 10-22週 | 11-15週 | 15週以降 |
対象疾患 | ダウン症候群 18/13トリソミー | ダウン症候群 18トリソミー 開放性二分脊椎 | ダウン症候群 18/13トリソミー | 染色体疾患全般 (感度99.1%) | 染色体疾患全般 (感度99.7%) |
感度(ダウン症侯群に対して) | 80-85% | 80-85% | 99.1% | 99.9% | 99.9% |
検査の安全性 | 非侵襲的 | 非侵襲的 | 非侵襲的 採血のみ | 流産率約1% 腹部に穿刺 | 流産率約0.3% 腹部に穿刺 |
特徴 | ダウン症候群の80%以上を検出 | 母児に無侵襲 ダウン症侯群の検出率が高く偽陰性が少ない (0.1%以下) 妊娠10週から可能 | 確定診断 | ||
早期からの診断可能 | 妊娠15週以降に施行 | ||||
限界 | 偽陽性率が高い(5%程度) | 羊水検査でわかる染色体疾患の2/3程度の異常しか検出できない (羊水検査でのFISH法での診断と同様) 胎盤性モザイクの検出 | 侵襲性(腹部に穿刺) 流産・破水・出血・母体損傷などの 副作用リスク | ||
胎盤性モザイクの検出 | |||||
検査費用 (施設で異なる) | 10,000円 ~20,000円 | 20,000円 ~30,000円 | 200,000円程度 | 100,000円 ~200,000円 |